京都の異空間ロックバンド・ヘルミッショナルズがお送りする劇空間コラム。

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家族の肖像
JUGEMテーマ:地域/ローカル


俺は一人でコーヒーを飲んでいた。
古ぼけた喫茶店には客は一人もなく
店員である婆さんが、何もせずにじっと虚空を
見つめているだけであった。

俺はこの喫茶店が好きで
よく通っていた。
心地よいジャズの音の中
婆さんは手書きの汚れたメニューを持ってきて
黙ってメニューを置いていく。

そのメニューの中によくわからぬ項目があり
「これは何?」
などと見たことのないコーヒーについてきくと
「これは不味い」
と、一刀両断の人を寄せ付けぬコメントを
してくれる所など、またたまらない。


そんな喫茶店で、俺は今日も一人でコーヒーをすすっていた。
夕方の閉店前の喫茶店で、俺と婆さんの空気が
ジャズドラムによってかき回されるのを
心地よく感じながら、俺は本に熱中した。

しばらくして虚空を見つめる婆さんを視野の端っこで確認すると
俺はまた自分持ってきた本に目をやり、再びコーヒーをすすった。

その時である。
玄関のドアのベルが

カランカラン

となった。


俺はドアの方に視線をやってみたが
人影は見当たらなかった。

はて?
と思っていると
婆さんがドアの方にのっそりと近寄り
黙ってドアを開けた。

するとその隙間から猫が入ってきた。
汚らしい、そして愛らしい雑種の猫である。

俺はこの光景をみて
目頭が熱くなった。

これぞ家族である。
何て愛のある光景であろうか。
黙って家に帰ってくる家族の絵が
こんなにすばらしいものであるとは。

時代の狭間に落ちてしまった
温かさのようなものを
垣間見た気がした。

俺はこの温度を感じられる
自分にある意味ホッとした。

そして俺は本を閉じ
帰路についた。
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